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事前学習のヒント

このページでは、「事前学習」に焦点を当てて、設計や開発のヒントをご紹介します。

設計

対面授業を実施する前に、学生に基礎知識を修得してもらいたいときに「事前学習」の準備をします。

「事前学習」として「情報提示」「学習活動」の2種類のコンテンツを用意することがポイントです。

  • 情報提示コンテンツ・・・ビデオ、配布資料、書籍など
  • 学習活動コンテンツ・・・小テスト、小レポート、演習課題など

単にビデオや資料で情報提示するだけでは知識の修得にはつながりにくいです。それどころか、見ない(読まない)学生もいるかもしれません。学生自身が考え、考えたことをアウトプットする活動も組み込むことで、効果的な事前学習になります。

情報提示コンテンツと学習活動コンテンツを組み合わせた具体例は、「実践紹介」を参考にしてください。

情報提示コンテンツの設計

「情報提示コンテンツ」として、必ずしも自前の講義ビデオを用意する必要はありません。学生によっては、資料を読むことでも十分に知識を修得できるでしょう(もちろん、そうではない学生もいます)。学生と授業内容の特性を考慮することが重要です。

さらに、ビデオを作る(あとで修正する)手間を考えると、自前のテキスト資料を配布するほうが効率的な場合もあります。学生が理解しやすく、かつ教員(ご自身)にとって大きな負担がないコンテンツを検討してください。

また、既存のコンテンツの活用も検討してください。ご自身で作らなくても、インターネット上には様々な動画や資料があります。そして、よい教科書があるなら、教科書のどこを読むか指定するだけも十分でしょう。

学習活動コンテンツの設計

よくある例としては、ビデオを見た後に、ビデオの内容を確認する小テスト(クイズ)を数問用意します。どうしても覚えてほしい用語や概念などがある場合に有効です。

また、ビデオの内容を踏まえて、ちょっとしたレポートや演習課題を課すのも効果的です。ビデオの要点をまとめたノートを作成することも考えられます。

いずれにせよ、事前に行う学習活動が無駄にならないよう、対面授業にうまくつながるように設計するのがポイントです。たとえば、事前学習の小テストの答え合わせや解説は対面授業で行うとか、事前の小レポートで書いた意見を踏まえて、対面でディスカッションをするように仕組むといったことが考えられます。

開発

自分自身で反転授業の事前学習コンテンツを開発し、学生に公開する際は、「コンテンツを公開する場所」「コンテンツそのもの」が必要になります。

「コンテンツを公開する場所」については、徳島大学の場合は「i-Collabo」「Moodle」の2種類の学習管理システムがありますので、よろしければ利用を検討してください。

「コンテンツそのもの」については、前述の設計を踏まえて、学生や授業内容に合わせて可能な範囲で多様なコンテンツをご用意ください。なお、「i-Collabo」や「Moodle」を利用すると、小テストなどは簡単に作成できます。

コンテンツを公開する場所

(ア)自分のホームページ等

ご自身のホームページ等をお持ちの際は、ご自身で管理・運営をなさってください。

(イ)徳島大学i-Collabo(アイ-コラボ)

徳島大学の学習管理システムの1つです。単位化されている授業の場合、教員が何もしなくても自動的にコース(コンテンツを公開する場所)が出来上がっています。i-Collaboについては以下を参考にしてください。

i-Collabo

(ウ)徳島大学Moodle(ムードル)

単位化されていないプログラムの中で反転授業を実施する場合や、複数の授業で共通したコンテンツを使いたい、複数の教員で授業を担当したい(シラバスには載せていない教員やTAも参加する)という場合には、Moodleの利用をお勧めします。Moodleの利用にあたっては、eラーニングサポート室へ利用申請をしていただく必要がありますが、柔軟な運用ができます。利用を検討される際は、一度eラーニングサポート室へお問い合わせください。

moodle

コンテンツそのもの

(ア)動画を作る場合

動画を作る方法はいろいろあります。以下では手軽な動画コンテンツ(ナレーション付きの説明動画)を作る際のポイントをご紹介します。おすすめはPowerPoint2013にOffice Mixを追加する方法です。

■必要な道具

  • パソコン
    マイクとカメラ付きのノートPCが1台あれば十分です。
  • PowerPoint2013やKeynoteといったプレゼンテーションソフト
  • (必要に応じて)マイク
    パソコンにマイク内蔵されていない場合や良い音で録音したい場合は、別途マイクを用意してください。
  • (必要に応じて)カメラ
    教員の顔はあまり必要ありませんが(後述)、どうしても入れたい場合はカメラがあるとよいでしょう。
  • (必要に応じて)動画作成ソフト
    単純にプレゼンテーションスライドにナレーションをつけた動画を作成するなら、プレゼンテーションソフトがあれば、動画作成ソフトを別途購入する必要はほぼありません。より凝った動画を作りたい場合に用意してください。

■動画作成ソフトの例

  • Office Mix(Microsoft社)
    PowerPoint2013へ追加するソフトウェアです(PowerPoint2013がインストール済みであれば無料で追加できます)。ナレーションをつけて動画ファイルを書き出すことができます。公式サイト(https://mix.office.com/ja-jp/Home)からダウンロードしてください。Office Mix マニュアル(PDF)も参考にしてください。
  • Keynote(Apple社)
    Mac版ならナレーションをつけて動画ファイルを書き出すことが可能です(iPad版はできないようです)。
  • Camtasia Studio(TechSmith社)
    有料(2万円程度)の画面録画ソフトウェアです。プレゼンテーションソフトのスライドを録画するのではなく、パソコン画面を録画しながら説明したい場合におすすめです。たとえば、Excelの操作をしながら説明をしたいという場合などです。類似の無料ソフトもありますが、反転授業用のコンテンツ作成に便利な機能をいろいろと備えています。
  • Premiere Elements(Adobe社)
    有料(1万円程度)の動画編集ソフトウェアです。プレゼンテーションソフトのスライドにナレーションを入れるだけではなく、ビデオカメラで撮影した動画を編集したい(しかも少し凝った演出をしたい)のであれば、比較的安価で高機能なためおすすめです。

参考:Office Mix マニュアル(PDF)

【動画作成のポイント】
  • 動画は長くても15分以内にする(1本10分以内が理想)
    一般論として、学生は長い動画を見ません。また、徳島大学の動画コンテンツの視聴履歴から、10分を超えると中断する学生が増えることを確認しています。15分以上になるなら分割して複数の動画にしましょう。
  • それほど高画質でなくてもOK
    高画質の動画は再生途中で止まったりする場合もありますので、文字が読める程度の画質で十分です。細かい文字や画像を提示する必要があるなら、別途、資料を配布したほうがよいでしょう。
  • 説明の声ははっきり聞こえるようにする
    速度はあまり気にする必要はありませんが(一時停止や巻き戻しが可能なため)、聞き取りにくいほど小さい声にならないように気を付けてください。
  • 凝った演出は不要。分かりやすく、シンプルな動画がよい
    教育メディア研究から、簡潔な視覚情報とナレーション(音声情報)による動画が最も学習効果が高いと言われています(二重チャンネルの原理とモダリティー効果)。凝ったアニメーションや映像効果などは、注意が焦点化されないなどのマイナス効果があるため、学生の満足度は高くともむしろ学習効果は低下するとされています。過度な演出は避け、簡潔な説明を心がけましょう。
  • 教員の顔は常になくてもよい
    これも教育メディア研究から、人は1度に大量の視覚情報を処理できないことがわかっています(能力の限界原理)。つまり、視覚情報として「学習内容」と「教員の顔」の2つを提示すると、情報過多となり学習者の気を散らす可能性があります。動画の最初に教員が登場するぐらいは親近感を持たせる効果も期待できますが、学習内容の説明に入ったら教員の顔はなくてもよいでしょう。
(イ)資料(PDFファイル等)をアップロードする場合

i-CollaboやMoodleを利用すれば、ファイルをアップロードして学生に公開するのは簡単です。授業で必ず使う資料だけでなく、意欲的な学生向けに、発展的な内容の参考資料や補足資料を公開するのもおすすめです。

(ウ)小テストを作る場合

動画や配布資料だけを用意しても、きちんと見ない学生は多いです(見てもすぐ頭から抜けます)。学生がアウトプットせざるを得ないコンテンツも合わせて用意することで、効果的な事前学習になります。i-CollaboやMoodleを利用すれば、自動採点付の小テストを比較的簡単に作成できます。授業前に学生の理解度を把握することもできます。

そうはいっても良問をたくさん用意するのは難しいので、まずは簡単な問題を数問用意することからはじめ、学生の成績を見て、次回(次年度)に改善していくことをおすすめします。

【自動採点付小テスト作成のポイント】
  • ○×問題(2択)はなるべく避ける
    ○×問題(2択)は、あてずっぽうに答えても半分は正解しますので、よほど問題数が多くない限り有効とは言えません。できれば選択肢が4つ以上の問題を用意することをお勧めします。
  • 記述式(穴埋め式)問題では、複数の正解があり得ないか要チェック
    文字を入力させる問題の場合は、正解として認める単語をすべてシステムに登録する必要があります。たとえば、正解として「eラーニング」と入力してほしいとき、「e-ラーニング」「e-learning」「e-Learning」なども正解として認めるかを検討する必要があります。あくまで機械的な自動採点ですので、漢字・ひらがなの区別、大文字・小文字の区別はできません。学生が「正しい用語を入力しているはずなのに何度やっても正解にならない」とイラつかないよう、正解の登録に注意してください。
  • 小テストの問題数が多いとき
    eラーニングサポート室では、Moodle用の小テストのテンプレート(Wordファイル)をご用意しています。テンプレートを利用すれば、問題の一括登録が可能です。詳しくは、eラーニングサポート室へお問い合わせください。
(エ)小課題を提出してもらう場合

i-CollaboやMoodleを利用すれば、小課題(レポート)の指示文を提示し、学生にファイル提出をしてもらうこともできます。ただし、パソコンでレポートを書くこと自体に不慣れな学生がいる場合は手書きの提出も認めるなどの配慮が必要でしょう。i-CollaboやMoodleには小課題の指示文だけをアップロードしておき、提出は対面(レポートボックス)で受け付けるといったように、学生に合わせて柔軟に授業設計をしましょう。

(オ)リンク集を作る場合

インターネット上には様々な動画や資料、教材が公開されています。全てのコンテンツをご自身で作る前に、授業で利用できる優良コンテンツがないか、検索されることをおすすめします。i-CollaboやMoodleを利用すれば、既存のWebページへのリンクや、リンク先をまとめたリンク集のページも簡単に作成できます。

【よくある質問】
  • 動画のかわりに、PowerPointなどの資料を配布するのではだめでしょうか。
    学生が読めば理解できる資料になっていて、なおかつ学生がきちんと読んでくることが見込めるなら、わざわざ動画を作らなくても既存ファイルをアップロードし(あるいは印刷配布して)、事前に読んでくることを指示すれば十分です。一般的に年齢が高い(その領域の初学者ではない)学生ほど読解力があるので、配布資料でも理解できると思われます。むしろ「動画より読んだ方が早い」という学生もいるでしょう。
    一方で、最近の学生はデジタルネイティブ世代ですから、動画に慣れ親しんでいます。大学生らしい資料や文献を読ませる練習をしつつも、場合によっては学習者に合わせた容易な動画教材を用意することも検討する価値はあるでしょう。最初は既存の資料を配布してみて、理解できていないようなら次回から別途教材を用意するというように、無理せず段階的に準備していくのもおすすめです。
    余裕があれば、2種類のコンテンツ(例えば「ビデオ」と「ビデオ内容と同一のPDFファイル」)を用意して学生に選択させることも有効です。
  • 普段の授業を録画した動画を教材として使えるでしょうか。
    声がはっきり聞こえて、黒板などの文字がしっかり見えるのであれば、授業を録画した動画も教材に使えます。ただし、反転授業の事前学習教材用に、動画を編集されることを強くお勧めします。まず、長くても15分程度になるように分割してください(90分の授業をそのまま流しても学生は見ません)。また、冗長な説明や学生との会話などをカットすると分かりやすい動画になります。なお、こういった編集の手間を考えると、撮りなおしたほうが早いかもしれません。

お困りの時は

徳島大学eラーニングサポート室では反転授業用のコンテンツ開発に関する各種お手伝いをしています。また、ICT活用教育部門の教員が、目的に応じた効果的な授業設計・コンテンツ設計のアドバイスもさせていただきます。お困りのことなどございましたら、お気軽に以下へご連絡ください。
toiawase

(文責:高橋暁子)